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MFC(マスフローコントローラー)やMFM(マスフローメーター)のゼロズレの容疑者達を全員確保できました。
彼らを類別してみますと面白い事がわかってきます。

今回はそこをまとめて、ゼロズレ問題の区切りとしましょう。

 

第一にゼロズレには、MFC/MFMが採用している熱式センサーの弱点(SN比、熱影響)がはっきり出ていることです。
前に微少流量用MFC/MFMをご説明したときのキーワードはセンサーのSN比でした。

熱式流量センサーは、対になったヒーター線のバランスで成り立っていて、そのわずかな抵抗値の経時変化によりゼロがシフトする構造になっています。
また、センサーの生出力が数mVであり、これを後段のアンプで増幅して05Vの流量信号としている事により、そもそも決してSN比が良いセンサーとは言えません。

そして、もう一つ熱式センサーであるが故に、周囲温度や姿勢影響を受けやすい事です。

また、周囲より高温になるセンサー部分の外気影響を緩和すべく使用される材料の個体差、環境変動も原因となります。
こういった弱点を持つMFC/MFMは、非常に神経質な機器です。
ラフな環境設定で使っていただくには適さない製品だという事をご理解ください。

thermal-sensor_3

 第二にはMFC/MFMが自ら流量制御を行う小型装置的な性格を持ちながらも、ガス、電源、流量設定信号に至るまでの供給は外部からであり、その制御に関しては決してスタンドアロンで成り立たないことから生じる誤解です。
すぐに故障と考える前に、取り巻く環境を一つ一つ切り分けていただく事で、迅速なトラブルからの復帰が可能になるかもしれません。
これは隣のラインのMFC/MFMとケーブルをつなぎ替えたり、別の電源環境で操作してみるだけでも簡単に実施できます。

MFC/MFMCに限りませんが、使用する機器の特徴を把握し、弱点を知る事、不具合が生じた場合は、慌てずに現象を切り分ける事ができるようになること=機器を「使いこなす」というレベルに到達することなのです。

 

大変残念な事にリーマンショック後、多くのマスフローメーカーが廃業や、統廃合されました。
今、存在するメーカーもサービス拠点や人員の整理で、どうしても顧客サポート力が低下しがちです。

サポートというものは人の手であり、知恵であり、経験で行うものです。

なかなか代わりになるものが簡単に見つかるわけではありません。

こういった環境下で、皆さんのお手元にあるMFC/MFMを有効に活用して頂き、本来の生産や研究業務に専念して頂くために、少しでもこの記事が手助けになればと思っています。